ひきつけは主に小児が起こすけいれんのことを指し、大泣きして脳が異常に興奮した時や高熱を出した時などに起こることがある症状です。
特に高熱が原因で起こるひきつけについては、予防目的でダイアップというひきつけ予防薬を処方されることがあります。
しかしながら、ダイアップは細かく使用回数が決められていることから、薬の使用に対して不安を感じる方も少なくないかもしれません。
今回はひきつけ予防薬ダイアップの正しい使い方を中心に、ひきつけが起きた時の家庭での対応を解説していきます。
ダイアップの使い方に疑問がある方は参考にしてください。
ひきつけ予防薬ダイアップとは
ダイアップはジアゼパムを主成分とした坐剤で、先発薬には高田製薬のダイアップ坐剤4、ダイアップ坐剤6、ダイアップ坐剤10の3種類がありますが、後発品の販売はありません。
ダイアップの処方について
ダイアップは熱性けいれんの予防を目的に使用される薬剤ですが、熱性けいれんを経験した子どもの約7割はけいれんを再発しないため、ダイアップの使用は一部の方に限られるのが特徴です。
ダイアップが処方されるのは、過去に2回以上熱性けいれんを起こしたことがある方、過去に15分以上の長いけいれんを経験したことがある方、遺伝的に不安がある方などが主となっています。
副作用の観点からも、このような症状を起こした経験がある方以外が安易にダイアップを使用しない方がいいとされています。
ただし、副作用のリスクよりも有用性が上回る場合についてはこの限りではありません。
ダイアップの効果
ダイアップは熱性けいれんやてんかんのけいれん発作の改善に効果を示す薬剤で、ベンゾジアゼピン系抗てんかん薬に分類されます。
ひきつけなどの熱性けいれんは脳内における神経の異常な興奮が原因となるため、脳内にあるベンゾジアゼピン受容体に働きかけるダイアップを使用して症状を改善します。
また、ダイアップを使用すると未使用時に比べてひきつけの発生を7割以上減らせると言われていますが、効果が現れるまで約15分かかるため、けいれんが起きてからの使用については効果があまり期待できません。
ダイアップの用法用量
ダイアップは通常、小児にジアゼパムに換算して1回0.4~0.5mg/kgを1日1~2回を肛門から挿入して使用しますが、使用量によっては座薬をハサミで切ってから使用することもあります。
なお、症状や強さによって薬剤の量を増減できますが、1日1mg/kgを超えないようにしなければなりません。
また、ダイアップをひきつけ予防薬として使用する場合には一度の発熱で2回使用していくのが基本です。
熱性けいれんは発熱してから24時間以内に起こるケースが大半なので、37.5℃以上の発熱が分かった時点で、まず1回目を使用します。
そして、1回目の8時間後に2回目のダイアップを挿入します。
もし1回目のダイアップ挿入後に解熱していたとしても、2回目を使用するのが原則です。
もし、副作用などが気になって2回目の使用をためらうような場合には、医師に相談するとよいでしょう。
ダイアップの副作用・禁忌
ダイアップの副作用には眠気、興奮、ふらつき、頭痛、吐き気などがあり、重篤な副作用としてけいれん発作やせん妄、幻覚などの症状が報告されています。
これらの副作用の懸念から、ダイアップを使用した翌日は熱が下がっていたとしても家で安静に過ごすようにしましょう。
また、ダイアップは急性閉塞隅角緑内障や重症筋無力症を患っている方、新生児、妊婦は使用禁止です。
さらに肝機能や腎機能、心臓、脳に障害がある方、呼吸不全がある方、授乳婦、1歳未満の乳児には慎重に投与する必要があります。
飲み合わせに関しても、過度の鎮静や呼吸抑制が起こるためリトナビルとニルマトレルビル・リトナビルとの併用は禁止です。
他にも、中枢抑制剤、フェノチアジン系薬剤を始めとする複数の薬剤で作用が増強したり、血中濃度が上昇したりするなどの報告があるため、他の薬剤と併用したい時には必ず医師か薬剤師に相談するようにしましょう。
食べ物についても、コーヒー、紅茶、緑茶、チョコレートなどのカフェインを含むもの、アルコールを含むものはダイアップ使用中は避けてください。
ひきつけ予防薬ダイアップのよくある疑問点
ここまで、ひきつけ予防薬のダイアップの基本的な内容を紹介してきましたが、ここからはさらに一歩踏み込んだ具体的なよくある疑問について解説していきます。
ダイアップを使用してもひきつけは起こる?
ひきつけ予防薬のダイアップを使用しても完全にひきつけを予防できるわけではありませんが、未使用時と比べてけいれんの発生を7割以上減らせると言われています。
ただし、ダイアップ使用中に起きたひきつけは熱性けいれん以外の病気が隠れている可能性もあることから、必ず医療機関を受診するようにしましょう。
また、ダイアップの使用量は体重によって決められているため、成長した時には薬剤の用量が変わります。
薬剤の用量が足りなくてひきつけを予防できないことがないように、薬剤の管理は定期的に行ってください。
熱が続くので3回目も使用していい?
ダイアップの使用は2回目までとし、3回目は使用しないのが一般的です。
これは、ダイアップの主成分であるジアゼバムの半減期は約30時間と長いため、発熱後24時間以内に起こる熱性けいれんには2回の使用で足りると考えられているからです。
ダイアップを使いすぎると眠気やふらつきなどの副作用が増強されるため、3回目以降の使用は控えてください。
ダイアップとカロナールの順番はどうしたらいい?
熱性けいれんの時にはダイアップと一緒に解熱剤のカロナールを処方されるケースが多くあります。
カロナールが内服薬であればダイアップと同時に使用しても問題ありませんが、カロナールも坐剤の場合には薬剤の効果が弱まってしまうため、薬剤の使用間隔を30分以上空ける必要があります。
カロナールが坐剤である場合には先にダイアップを使用し、熱が上がり切ったらカロナールを使用するとよいでしょう。
また、カロナールなどの解熱剤には熱を下げる効果はありますが、ひきつけを予防する効果はないため、必要以上に使用するのは避けましょう。
ダイアップはどのように保管すべき?
坐剤は体温で溶けるように作られていることから、夏場や直射日光が当たる場所、暖房器具の近くなどの30℃を超える場所は避けなければなりません。
坐剤が溶けるのを防ぐためにも、温度が一定に保たれている冷蔵庫で保管するとよいでしょう。
冷蔵庫で保管している坐剤は滑りにくく刺激が強くなるので、使用前は数分おいて常温に戻したり、手で温めたりすると使用しやすくなります。
家庭でのひきつけの対応
急に身体を硬直させるひきつけが起こると、心配になって、どうしたらよいのか慌ててしまうかもしれません。
ここでは、家庭でひきつけが起きた時の正しい対応について解説していきます。
落ち着いて時間と様子を確認する
ひきつけが起きた時はまず落ち着つくことが大切です。
そして、発作が起きている時間を計り、患者さんの様子を確認することに集中してください。
一般的なひきつけは数分間で止まりますが、5分以上続くひきつけが起きた場合には救急車を呼ぶ必要があります。
また、患者さんのけいれん時の様子を確認しておき、医療機関を受診した時に状況を伝えられるようにしましょう。
安全を確保する
ひきつけでは急に身体が動くことがあるので、患者さんの身の回りに危険がないように周囲の物をどかします。
さらに、ひきつけ中に吐瀉物が喉に詰まって窒息するのを防ぐために顔を横に向けます。
この時、舌を噛むのを防ぐためと口の中に指やタオルなどを入れるのはやめましょう。
けいれん中に舌を噛むことはほとんどなく、かえって舌を奥に押し付けてしまい窒息を招く危険性があります。
また、けいれんを止めようと身体を押さえたり、飲み物や薬剤を飲ませたりするのも禁止です。
衣服を緩める
苦しくないように、ボタンを外すなどして衣服やオムツを緩めてあげましょう。
外せるのであれば髪留めなども取り、少しでも楽な体勢にしてあげてください。
救急車を呼ぶ・病院を受診する
けいれんが5分以上続いたり、けいれんが落ち着いても意識が戻らなかったりする時には、救急車を呼んでください。
また、初めてひきつけを起こした時や発熱がない時、全身ではなく身体の一部にだけひきつけが起きた時、ひきつけ後も手足がしびれているような時には、意識の回復が良くても医療機関を受診するようにしましょう。
ひきつけ予防薬ダイアップは用法用量を正しく理解してから使用する
ひきつけ予防薬ダイアップは、活発になりすぎた脳の活動を抑制してひきつけを防ぐ効果がある坐剤で、未使用時と比較して使用時には約7割のひきつけの発生を減らせるとされています。
ダイアップは発熱した時と薬剤を使用した8時間後の合計2回使用するのが基本で、3回以上使用することはありません。
また、薬剤の効果が発現するまで約15分かかることから、ひきつけが発生してからの使用はほとんど効果は期待できないとされています。
ひきつけが起きると慌ててしまいますが、落ち着いて患者さんの様子と発作の時間を確認することが大切です。
初めてのひきつけやひきつけ後も手足がしびれているような時には医療機関を受診し、5分以上けいれんが続く時やひきつけが落ち着いても意識が戻らないような時は救急車を呼ぶようにしましょう。